北陸地方にあるK社は、機械部品小売業の世界では知る人ぞ知る企業です。
この業界は納入先企業が中国、東南アジア製品に押され、厳しい不況の嵐にさらされており、昔のように商品が思うようには動きません。そのような環境のもとで、K社はここ数年来、二ケタ成長を続けています。同業他社にすれば、なぜK社製だけがそんなに売れるのかが不思議でなりません。
扱う商品は自分たちと変わらず、K社だけ特別な物があるわけではありません。価格にしても、目を見張るような安さではなし。立地条件とて、特別に恵まれているわけではありません。
にもかかわらず、K社の店舗にはひきもきらずお客が吸い寄せられるように来店するのです。経営コンサルタントの山本氏は、同社のО社長に「なぜK社だけが伸びるのか。何か秘密でもあるのか」と問い質したところ、社長は首をひねりながら「さぁー、これといって思い当たるところはありませんね」と言うのです。
多少の心がけとして、お客様の都合を考えて他社より早めに開店し、やや遅めに閉店しているようですが、しかし山本氏の見るところ、その程度のことは他社でもやっており、むしろK社以上に徹底してやっているところはいくらでもあるのです。
しばらくして、K社の近くで早朝勉強会の講師を山本氏が務めることになりました。当日、ホテルへО社長が迎えに来て、会場への道すがらK社に寄りました。社の前に車を横づけしたО社長は、シャッターを開け、真っ暗な店内に向けて「皆さん、おはようございます」と挨拶をしたのです。そして店内の電気をつけ、商品に向かって声をかけながら歩き始めました。
「おはよう! 今日も期待しているぞ」と言ったかと思うと、隣の商品には「おい、いつまでここにいるつもりだ。グズグズするな、早くお客様のところへ行って働け」と厳しく叱りつけています。この姿を目にした山本氏は、これが成長の秘訣だと感じ、「いったい、いつから商品への声かけをしているのですか」と問いました。
何年か前に、数店舗の美容院を経営している女性社長の話を聞く機会があり、この女性社長が早朝四時から店舗を拝んで回っていることを知ったそうです。「今日も一日、お客様に喜んでいただけるような仕事ができますように…。スタッフみんなが元気でありますように…」と毎日欠かさず念じているという話を耳にした瞬間、自分もやってみようと思い立ったといいます。
О社長の何気ない継続的な実践が、じつは社の経営を押し上げる大きな原動力となっていたのです。
「物はこれを愛する人によって産み出され、これを大切にする人のために働き、これを生かす人に集まってくる。すべて生きているからである」(『万人幸福の栞』84頁)
K社の伸長は、まさに「物は生きている」の表われです。ただし、無意識の中でО社長が繰り返してきた実践が、たまたまツボにはまったということを山本氏は伝え、「物とは何か」「物に対してどのように接するか」等を改めて事細かに諭しました。
私たちもひとつ、身近な物に生命を吹き込むためにも、爽やかで温かな言葉をかけてみようではありませんか。
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コメント
「物に息を吹き込む」って
いい言葉ですね。
物にも人にも命を吹き込み
どんどん活かしてあげたいですね。
投稿者: Anonymous | 2007年08月24日 09:09
コメントありがとうございます。長文にもかかわらず、読んでいただきありがとうございました。実践あるのみです。
投稿者: 井川のはた | 2007年08月24日 16:56
こんにちは。とてもよい話でした。私も早速、実践してみたいと思います。
先日は、楽しい時間をありがとうございました。
出会いに感謝ですね。
投稿者: 八橋の | 2007年08月25日 12:36